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  1. 学習院大学
  2. 学位論文
  3. 博士(美術史学)
  4. 2019年度

日本中世絵画における女性の信仰と表象に関する研究

http://hdl.handle.net/10959/00004856
http://hdl.handle.net/10959/00004856
966627e2-8d94-4f50-ac14-a492dd52ece9
名前 / ファイル ライセンス アクション
abstract_O172.pdf abstract_O172.pdf (448.7 kB)
ref_abstract_O172.pdf ref_abstract_O172.pdf (339.7 kB)
Item type 学位論文 / Thesis or Dissertation(1)
公開日 2021-02-25
タイトル
タイトル 日本中世絵画における女性の信仰と表象に関する研究
言語 ja
タイトル
タイトル ニホン チュウセイ カイガ ニオケル ジョセイ ノ シンコウ ト ヒョウショウ ニ カンスル ケンキュウ
言語 ja-Kana
言語
言語 jpn
資源タイプ
資源タイプ識別子 http://purl.org/coar/resource_type/c_db06
資源タイプ doctoral thesis
アクセス権
アクセス権 open access
アクセス権URI http://purl.org/coar/access_right/c_abf2
著者 成原, 有貴

× 成原, 有貴

WEKO 46857

ja 成原, 有貴

ja-Kana ナリハラ, ユキ

en Narihara, yuki

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抄録
内容記述タイプ Abstract
内容記述 本論は、女性の信仰を描く中世絵画がいかなる意味を有し、どのような機能を果たしたのかを考察するものである。院政期から鎌倉時代の絵画史研究において、「久能寺経」・「扇面法華経」・「慈光寺経」などの一品経や、「普賢菩薩像」をはじめとする尊像画、「華厳宗祖師伝絵」といった説話画などから、絵と女性の信仰の関わりが辿られてきた。本論では、女性の信仰や往生・成仏のさまが描かれた作品の中でも特に、その成立に貴族女性の関与が考えられる「阿字義絵」(藤田美術館蔵)、「平家納経」(厳島神社蔵)、「当麻曼荼羅縁起絵巻」(光明寺蔵)に着目し、女性の関与の具体相を含めて、制作事情を詳しく考察することにより、女性や女性をとりまく人々の信仰における絵画の意味と機能について、その一端を明らかにする。
本論で考察する三点の作品は、それぞれ主題は異なるものの、出家や在俗の貴族女性の仏道の行いや、往生・成仏がこまやかに描かれており、絵画と女性の信仰の関係を、尊像画などとはまた別の面から辿り得る可能性を持つ。しかし、いずれも、女性の関与の具体相に関する検討や検証は進展しておらず、制作事情には未解明の部分が多い。どのような人びとが関与し、その中で女性がどのように関わり、作品がいかなる意図によって生み出され、機能したのかを考察する余地が残されている。
本論では、各作品の制作事情の考察を、女性とその信仰をとりまく当時の社会的・文化的状況を考慮した、新たな観点から行う。従来、各作品をとりまく歴史的状況として考慮されてきたのは、主に寺院や僧侶との関係であった。しかし、貴族女性の信仰生活の傾向や特質を視野に入れることも重要であると思われる。女性の信仰のあり方や信仰の場をめぐる先学の検討によれば、九世紀以降の官僧体制の再編を背景とする官尼の地位低下や尼寺の衰退に伴い、女性の私的な出家や、尼寺に居住せず邸内の信仰空間などで仏道の行いをなす事例が増加し、出家動機や尼の役割も、家や家族と関連する部分が多くなることが指摘されている。鎌倉時代になって、尼寺の復興がなされてはいるものの、従来の信仰形態も残った。在俗の女性の場合も、婚姻や居住形態および財産相続等をめぐる変化が、家における役割や位置付けにとどまらず、信仰のあり方にも影響を及ぼしたといわれる。かかる状況を時代背景の一部として視野に入れ、絵の制作事情を考察することにより、女性の関与の具体相を含む未解明の部分を多少なりとも明らかにし得るのではないかと考える。
上記の観点のもと、以下の三部の各論では、それぞれの作品について段階的に考察を進める。まず、未だ十分に尽されていない詞書と絵の詳細な分析を行い、その特質を元に、いかなる立場の人びとが絵の成立に関与したのかを考察する。次に、女性の表現に注目して、ともに描かれた人物との関係や、女性をとりまく空間の描かれ方を分析し、制作意図や機能を考察する。
第一部(第一章から第三章)は「阿字義絵」研究である。本作品は、詞書に阿字観や法華経および念仏の功徳が記され、尼と在俗の貴族男性が、物語絵と同じ技法で一人ずつ描かれる。作品の全容は、松原茂氏の論(1984年)によって初めて紹介された。絵や書の様式分析による制作年代の推定などの基礎研究がなされたが、制作事情については、詞書が仮名交じり文であり、尼を描くことから、貴族女性の関与を想定するにとどまり、詳細な考察は後学の課題とされた。
第一章では、尼を中心とする絵の表現の分析と、詞書全体の内容の検討に基づき、女性出家者の発願により制作されたとの見解を提示するに至った。まず、尼の表現であるが、法衣ではなく袿を着用しながらも、髪を全て剃った頭部を頭巾で覆わず露わにする点に着目し、物語絵などに描かれた尼の例に照らして例を見ない姿であることを指摘した。そしてこのことから、絵は、出家した女性の個人的事情や境遇を反映したものであり、女性が発願し私的に鑑賞されたのではないかと推察した。次に、詞書については、阿字観と念仏を共に説く構成や文章の一部が、慈円作の伝承を持つ天台宗の立場から書かれた『阿字観』に近似することを指摘した。また、現状の詞書前半の阿字観に関する内容は、僧侶の著作の引用であることが確認できるが、後半の法華経と念仏に関する内容は、教義的専門性がやや弱く、読み手に対する語りかけの文が含まれることがわかった。以上から、詞書は、発願者の女性と近しい貴族男性が、文献の引用と自作の文を合わせ、天台僧の協力を得て、女性の発願に応えて作成したと推察した。本作品の模本の中には、絵の男性を九条兼実と見做すものがあり、また、詞書と構成が近似する先掲の『阿字観』は慈円作とされる。こうした史料から、本作品の制作に九条家の人物が関与した可能性を想定した。なお、第二章では、模本(江戸末期、神宮文庫蔵)を新たに紹介した。
第三章では、尼の表現をより詳細に分析し、制作意図を考察した。まず、尼の頭部に群青で表された髪の剃り跡を見出し、この表現が僧侶と同様であることをふまえ、変成男子による女性の成仏の祈願が込められたと推察した。次に、絵が、女性出家者と在俗の男性の組合せであることの意味を、当時の尼の役割や仏教的家族観に照らして検討し、制作意図として次の二つの可能性を想定した。第一は、絵は出家した妻と亡き夫であり、妻が自身の成仏の祈願と夫の供養の意を込めたと考えるもの。第二は、絵は母と息子であり、母自身の成仏の祈願と死後の供養を息子に託す願いが込められたと考えるものである。そして、剃髪した九条家出身の女性とその家族関係を鑑み、発願者の可能性が最も高い人物として、皇嘉門院聖子を想定した。
第二部(第四章・第五章)は「平家納経」見返絵研究である。「平家納経」は平清盛が長寛二年(1164)に厳島神社に奉納した結縁経である。願文には、一門の人々が分担したとあるが、分担の詳細や個別の祈願については記されていない。先行研究では、提婆品見返絵の「竜女成仏」の主題などから、平家の女性の関与が漠然と想定されるに留まっていた。これに対して筆者は、第四章において、提婆品だけではなく、「平家納経」法華経経巻のすべての見返絵を対象として、平安・鎌倉時代の法華経経意絵七十三作品との比較を行い、その内容を一覧表にまとめ、主題選択の傾向と図様の特質を析出した。その結果、勧持品・提婆品・薬王品・厳王品の四巻において、主題と図様の両面から、女性の信仰や往生・成仏が強調あるいは焦点化されていることがわかった。かかる特質の背景について、時代状況を視野に入れて考察し、次の二つの場合を推定した。第一は、女性自身が結縁したと考えるもの。第二は、仏教的夫妻観や家における女性の役割を鑑み、男性が結縁し、家族の女性の往生・成仏を祈願したと考えるものである。
第五章は、薬王品と厳王品見返絵の制作意図を、女性の表現に着目し、考察した。薬王品の経文では、女性は死後に再び女性の身を受けないと説かれるのに対し、絵では、在俗の女性が阿弥陀の光明を受け、その身体は画面上で此岸と彼岸の境界を跨いで描かれており、女性の身のままで浄土に導かれることが示されている。経文は、女性の穢れや障りを理由に、変成男子による往生を説くが、絵の表現は経文とは異なる。しかも画中の女性は、経文とは関わりなく、緋色の袴を着けた、長く豊かな黒髪の姿で表され、若年者を連想させる。厳王品見返絵にも同様の表現が看取される。若年女性を垢穢の存在としない絵の表現は、平家の女性自らの祈願と結び付けることもできようが、経巻制作当時の平家の状況を考慮するならば、むしろ、清盛の祈願との相関が推測される。経巻奉納の約五ヶ月前、清盛は、関白の藤原基実を娘盛子の婿に迎え、その後も娘たちを介して天皇や上流貴族の姻戚となった。経文に還元し得ない見返絵の独自の表現は、娘たちの婚姻と家の繁栄をめぐる清盛の祈願と関わり、成立したと推察される。
第三部(第六章~第八章)は「当麻曼荼羅縁起絵巻」研究である。当麻曼荼羅の由来を描く現存最古の作品である光明寺所蔵の本絵巻は、上巻に横佩大臣の娘が出家し、化尼(阿弥陀の化身)と共に蓮糸で浄土曼荼羅を作るさまを、下巻に主人公が曼荼羅を礼拝し往生するさまを描く。成立年代は、絵の様式から十三世紀中頃とする点で諸先学の見解がほぼ一致している。制作事情に関する詳論に佐伯英里子氏の研究(1979年)がある。佐伯氏は、十三世紀の当麻曼荼羅流布における浄土宗西山派の役割や、当麻寺曼荼羅堂の厨子扉の寄進銘に貴族女性たちの名前があることから、絵巻は西山派の関与のもと、貴族女性が発願し当麻寺に奉納したと想定した。
筆者は、当麻曼荼羅流布の状況からみて西山派の関与は想定し得るが、当麻寺に女性が奉納したとの説については、下巻の信仰空間や上巻の女性の手仕事にまつわる表現の分析から、佐伯氏とは異なる見解を提示するに至った。
第六章では、信仰空間の表現を分析した。曼荼羅を懸け、主人公が礼拝する下巻第二段・第三段の建物に着目し、詞書と縁起諸本の比較や、当麻寺寺家の制作とされる「当麻曼荼羅縁起絵」(掛幅本)との比較を行った。その結果、下巻第二段・第三段の建物は当麻寺曼荼羅堂ではなく貴族邸宅内の信仰空間として描かれ、周囲の景観も当麻在地の要素を含まないことがわかった。鎌倉期の当麻曼荼羅流布に関する史料からは、西山派が、当麻寺で曼荼羅の顕揚をなす一方で、京都の貴族邸宅で当麻曼荼羅の転写本を用いて布教したことが知られる。下巻に描かれた信仰の様相は、後者の布教のあり方と合致する。以上から、本絵巻は、西山派によって京都の私的空間における当麻曼荼羅の布教のために制作されたと推察した。
第七章では、女性たちが蓮糸の製糸や染糸を行う上巻の場面を中心に、掛幅本との比較を行い、以下の特質を指摘し、考察の発展を試みた。第一に、掛幅本では製糸を支援する天皇の存在が強調されるが、本絵巻では天皇の存在を仄めかすに留め、女性が主体的に行動して天皇の支援を引き出し、糸を紡ぐ。現実世界の貴族女性にとって、裁縫や染などの手仕事は、家族とくに夫の衣服調整に向けられた。しかし絵では、女性たちがその技を自身のために用い、男性の支援を得て、祈願を成就する。第二に、女性たちが蓮糸を染める井戸は、掛幅本とは異なり、「染寺」の故地に忽ち湧いたものとして語られ、この由緒が女性たちの作業を神秘化している。画中での手仕事は、世俗世界のそれとは差異化され、聖化されている。こうした表現は、殊に女性たちの関心を惹起したと考えられる。西山派の布教に関する記録中には、高貴な女性が発願したと思しき曼荼羅転写本の例があり、かかる事例も考え合わせ、本絵巻は京都での西山派の布教の中で、特に女性たちを曼荼羅の転写本制作にいざなうために制作されたと結論付けた。
第六章・七章で析出した信仰空間や手仕事の表現の特質は、鎌倉時代の「華厳宗祖師伝絵」や「頰焼阿弥陀縁起絵巻」に含まれる女性の信仰や作善の場面との比較からも、再確認されることとなった。第八章ではこの点について詳しく論じた。
以上、三点の各作品について、段階的な考察を行うことにより、絵画と女性の信仰の関わりの中で、詳らかにされてこなかった面を浮び上がらせた。すなわち、絵には、家族を含む人的関係の維持ないし形成や、作善への導きといった機能が期待されたことがわかった。また、絵が、女性の祈願のみによってではなく、女性と家族の関係および家における女性の役割と密着した祈願や、私的空間での女性への布教と関連し、生み出されたことを明らかにした。
フォーマット
内容記述タイプ Other
内容記述 application/pdf
著者版フラグ
出版タイプ VoR
出版タイプResource http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85
学位名
言語 ja
学位名 博士(美術史学)
学位名(英)
言語 en
学位名 Doctor of Philosophy in Art History
学位授与機関
学位授与機関識別子Scheme kakenhi
学位授与機関識別子 32606
言語 ja
学位授与機関名 学習院大学
学位授与機関(英)
学位授与機関識別子Scheme kakenhi
学位授与機関識別子 32606
言語 en
学位授与機関名 Gakushuin University
学位授与年月日
学位授与年月日 2020-03-07
学位授与番号
学位授与番号 32606乙第172号
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Ver.1 2023-05-15 15:06:36.016805
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