@phdthesis{oai:glim-re.repo.nii.ac.jp:00005399, author = {竹内, 太壱 and Takeuchi, Taiichi}, month = {2022-06-20, 2022-06-20}, note = {本論文は序論および本論3章から構成され、その概要は以下の通りである。  序論  Fischer型カルベン錯体は、カルベン炭素に直接酸素や窒素原子が結合した求電子性を有するカルベン錯体の総称であり、カルベン炭素への求核付加反応やC-H挿入反応、多様な環構築反応などが報告されている有機合成化学上非常に興味深い化学種である。一方で合成化学への応用の観点で見ると、煩雑な操作により事前調製されたFischer型カルベン錯体を化学量論量用いる必要があるなど、改善すべき課題が残されていた。  本研究ではまず、より簡便なFischer型カルベン錯体の調製法の確立を目指すこととし、アシルシランの光化学的性質に着目した。アシルシランは室温・中性条件下光照射により容易にシロキシカルベンへと可逆的に異性化する興味深い活性種である。この光異性化により生じたシロキシカルベンを金属中心に配位させることができれば、煩雑な工程を必要としない全く新しい、光化学的Fischer型カルベン錯体調製法を確立できると考えた。 第1章  本章では、光-金属触媒の協働作用による、シロキシカルベンの二量化反応について述べている。まずシロキシカルベン-金属錯体が必ずしも安定でない可能性を考慮し、カルベン錯体の生成とその効率を図る目安としてシロキシカルベンの二量化反応に着目して検討を実施した。多様な金属種の共存下でシロキシカルベン種を発生させる検討を行った結果、カチオン性銅触媒であるCu(CH3CN)4PF6を用いた場合に、シロキシカルベンの二量化反応が効率良く進行することを見出した。金属種非存在下ではシロキシカルベンが二量化することはないことも確認し、これより上記銅触媒はシロキシカルベンと相互作用してFischer型銅–カルベン錯体を形成している可能性が示唆された。この二量化反応についてはジシロキシアルケンの合成法として興味深い手法であることから、反応条件の最適化および基質適用範囲に関する検討を実施し、様々な置換基を有するジシロキシアルケンの効率的合成を可能とした。 第2章  本章ではFischer型銅-カルベン錯体の分光学的手法による観測について述べている。前章で述べた二量化反応ではFischer型銅-カルベン錯体が反応中間体として関与していることが想定される。カルベン錯体の生成を確認するためには、その安定性を向上させる必要があると考え、アシルシランのケイ素上に嵩高い置換基を有する基質を用いて検討を行った。その結果、トリイソプロピルシリル基を有するアシルシランを用いることで、室温、溶液中である程度の寿命を有する金属錯体を、ほぼ定量的に発生させることに成功した。この錯体は単離可能なほどの安定性はないものの、そのジクロロメタン溶液のNMRおよびUV-Visスペクトルによる解析から、目的とするFischer型銅-カルベン錯体の生成を確認することができた。本結果は、アシルシランの光異性化により生じたシロキシカルベンが金属錯体に配位可能であること実験化学的に示した初めての例であると共に、全く新しいFischer型銅-カルベン錯体の生成法を開発したものであり、学術的新規性が高い。 第3章  本章では、前章で確立したFischer型銅-カルベン錯体生成法を利用し、カルベン錯体を反応中間体とする触媒的分子変換反応の開発を目的に行った検討結果について述べている。遊離のシロキシカルベンは一般に求核的性質を示すが、カチオン性銅塩との錯形成により求電子的性質へと極性転換することが想定された。そこで、電子豊富な不飽和分子との付加環化反応の実現を目指して検討を行ったところ、触媒量のカチオン性銅塩の存在下、アシルシランと1,3-シロキシジエンの混合液に光照射すると、カルベン錯体と1,3-シロキシジエンが反応したと想定されるシクロペンタノン誘導体が効率良く得られることを見出した。本反応は、光を照射しない条件、また銅塩を添加しない条件では全く進行しないことから、光と金属触媒の協働作用により初めて進行する大変ユニークな分子変換反応であることが確認された。本手法は、様々なアシルシラン、シロキシジエンに適用可能であり、合成中間体として有用な多置換シクロペンタノン誘導体を効率的に合成可能である。さらに電子豊富な不飽和分子として、シロキシジエンに替えてシリルエノールエーテルを用いると、同様にFischer型銅-カルベン錯体中間体を経ると想定されるシクロプロパン形成反応が進行することも見出した。これらの結果は、アシルシランとカチオン性銅触媒から簡便に発生可能な銅-カルベン錯体が、有用な反応中間体として広汎な分子変換反応に活用できる可能性を示す結果である。  以上本研究は、アシルシランの光異性化で発生するシロキシカルベンと金属種との直接的な反応の実現により新規なFischer型金属-カルベン錯体生成法を開発すると共に、これを利用して触媒的な環状骨格形成手法の開発に成功した。, application/pdf}, school = {学習院大学, Gakushuin University}, title = {光反応を利用したFischer型銅 : カルベン錯体の新規調製法とこれを基盤とする触媒的分子変換手法の開発}, year = {}, yomi = {タケウチ, タイイチ} }