{"created":"2023-05-15T14:24:06.705020+00:00","id":5269,"links":{},"metadata":{"_buckets":{"deposit":"2ffb010f-3d19-4ac3-8a08-17bebe3c82e9"},"_deposit":{"created_by":15,"id":"5269","owners":[15],"pid":{"revision_id":0,"type":"depid","value":"5269"},"status":"published"},"_oai":{"id":"oai:glim-re.repo.nii.ac.jp:00005269","sets":["1253:135:139:1324"]},"author_link":["47646"],"item_10006_date_granted_44":{"attribute_name":"学位授与年月日","attribute_value_mlt":[{"subitem_dategranted":"2021-11-18"}]},"item_10006_degree_grantor_42":{"attribute_name":"学位授与機関","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_language":"ja","subitem_degreegrantor_name":"学習院大学"}],"subitem_degreegrantor_identifier":[{"subitem_degreegrantor_identifier_name":"32606","subitem_degreegrantor_identifier_scheme":"kakenhi"}]}]},"item_10006_degree_grantor_49":{"attribute_name":"学位授与機関(英)","attribute_value_mlt":[{"subitem_degreegrantor":[{"subitem_degreegrantor_language":"en","subitem_degreegrantor_name":"Gakushuin 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序章では、本論文の目的と構成について概観するなかで、対象年代とフィールド、研究史上の位置づけについて論述した。「近世蝦夷地在地社会」をテーマとする意義につき、従来の「北方史」研究が主に対外関係史ならびに流通経済史に重点が置かれてきたことに対し、近世蝦夷地それ自身に展開した歴史事象を、当該地域固有の社会構造として捉えることにあるとした。\n近世蝦夷地在地社会を捉えるためには、従来の「北方史」研究の成果と課題を踏まえる必要がある。ここでいう「北方史」とは、日本列島北方域の歴史を意味するが、伝統的な律令国家(五畿七道)の外の地域を含むため、「日本史」の方法論がそのまま援用し難い理由もあり、日本史研究のうえで琉球・沖縄史とともに特立した研究分野として認知されているといってよい。また、近世蝦夷地在地社会を考えるうえでは、通史として結ばれるべきアイヌ史における「近世」の特質を具体的に意識した検討が欠かせない。よって第I部(第1章~第5章)では、日本近世史研究における「北方史」、もしくはアイヌ史の特殊性に鑑み、蝦夷地に結ばれた在地社会を分析するに際し必要な理解の前提を整理・提示することが必要と考え、こうした課題を自覚しつつ論じた仕事を収めた(総論として第1章・第2章)。その際、場所請負制度下の在地社会におけるアイヌ社会のすがたを、その外にあった千島アイヌの社会の評価を含め、当該期アイヌ社会を囲繞する幕藩制国家日本・清朝・ロシア帝国を含めた国際的環境のなかで捉えることを意識した(第3章・第4章)。また、ロシアの南下や清朝辺民政策の自覚に伴い徳川家治・家斉期に生起した幕府の北方政策の転換が、在地のアイヌ社会に与えた影響を、やや巨視的に検討した(第5章)。そのうえで展開した場所請負制度の下に成立した在地社会の姿を、本書第II部以降では具体的に扱ったからである。このことについては、藤田覚『近世後期政治史と対外関係』(東京大学出版会、2005年)、横山伊徳『開国前夜の世界〔日本近世の歴史5〕』(吉川弘文館、2013年)が近年の理解を示すような、近世対外関係史研究の蓄積を意識した検討を心掛けた。\n 第II部(第6章~第9章)では、在地社会のなかのアイヌ集団のすがたを、北海道日本海岸南部に位置する西蝦夷地ヨイチ(余市)場所、ならびにオホーツク海岸に位置する西蝦夷地ソウヤ場所モンベツ(紋別)領を主なフィールドとし、幕末期を対象に個別具体的に分析した。第6章が、第II部の総論としての位置を占める。当該期のアイヌ集団の評価は、先述したように、場所請負制度の下に搾取され、「奴僕」となったというものであった。その論拠としてしばしば用いられたのが、松浦武四郎の記録であった。ここでは、場所請負商人の経営帳簿や幕府箱館奉行所のブランチである御用所の文書を精査することにより、在方史料(ムラ文書)の形成されなかった旧蝦夷地地域の在地社会史を描くことを試みた。それにより、場所請負制度の下に異文化を持した生産者集団として組み込まれたアイヌ集団のすがた(第6章)や、前貸精算制に基づく雇用の一般化により負債の恒常化した幕末のアイヌ集団の中に、なお相対交易(「自分稼」)が一定程度存続したことの意義(第7章~第9章)を検討した。これらのことについては、佐々木利和『アイヌ史の時代へ:余瀝抄』(北海道大学出版会、2013年)に示されるような、文献史学的アプローチによるアイヌ史研究の潮流を意識した検討を心掛け、個別実証的な事例研究の実践を試みた。\n 第III部(第10章~第14章)では、アイヌ集団の儀礼と併存・習合しつつ場所請負人経営の漁場儀礼のなかに内在化した社祠や堂庵(神仏)の特質を手掛かりとし、その背景にある「浜中」集団の宗教的環境を考察した。第10章が、第III部の総論としての位置を占める。具体的には、幕末の蝦夷地第二次幕領期における幕府の対蝦夷地政策の転換(百姓の蝦夷地入域・在住規制の緩和)と連動して実現した寺社の建立を俯瞰(第10章・第12章)したうえで、事例研究として西蝦夷地フルヒラ(古平)禅源寺創建(第13章)と同ヲタルナイ(小樽)住吉社の創建(第14章)の実際を、個別具体的に検討した。また、一九世紀初頭の蝦夷地第一次幕領期に幕府の手により設置され当該期にも存続し、寺院建立の主体ともなった蝦夷三官寺の性格をも視野に入れた分析(第11章)をおこなうことにより、幕府の宗教政策と在地社会の宗教的需要との双方を視野に入れた検討を試みた。これらのことについては、高埜利彦ほか編『近世の宗教と社会』全3巻(吉川弘文館、2008年)が近年の水準を示すような、近世宗教社会史研究の蓄積を意識した検討を心掛けた。\n 終章では、以上の仕事の意義を総括し、残された課題につき、素材とする文書に関する史料論観点を含め、整理・提示した。\n なお、以上の論旨を伴う本論文の章立ては、以下の通りである。\n【序章 本書の目的と構成】 \n  1 本書の目的―対象年代とフィールド―/2 研究史上の位置づけ/3 本書の構成\n【第I部 近世蝦夷地の捉え方】 \n第1章「近世の蝦夷」\nはじめに/1 時代区分論のなかの近世の蝦夷/2 松前藩の成立/3 城下交易から商場知行制へ/4 場所請負制の成立と展開/5 「蝦夷地」の先の「異国境」/6 抑圧のなかの成熟―近世アイヌ文化―/おわりに\n第2章「近年の“アイヌ史”研究管見――近世文献史学研究を中心に」\nはじめに/1 “アイヌ史”はどう語られてきたか?――場所請負制の理解を例に/2 “アイヌ史”研究のさまざまな構想/3 “アイヌ史”の史料論/おわりに\n第3章「「国家」史的観点からみた近世アイヌ社会」\n   はじめに/1 周辺諸「国家」からみたアイヌ社会/2 一七世紀以降におけるアイヌ社会の形態/おわりに―アイヌ社会に対する評価をめぐって―\n第4章「“近世アイヌ史”をとりまく国際的環境」\n  はじめに/1 サンクトペテルブルクの”アイヌ史”史・資料―史料の広がり―/2 “近世アイヌ史”の基礎認識/3 化外地と「開国」/4 商品生産と交易/おわりに\n  第5章「北の「異国境」―幕府外交の転換とアイヌ史上の画期―」\n   はじめに/1 「蝦夷」という語の意味と「蝦夷地」の先の「異国境」/2 旧族大名による異国・異域との通交・交易/3 北の「異国境」をめぐる経緯/4 松前藩による安永期の「異国」認識と交易認識/5 「蝦夷地改正」と松前藩による代替不可能性の主張/おわりに―アイヌ史上の画期―\n【第II部 在地社会のなかのアイヌ集団】\n第6章「近世蝦夷地「場所」共同体をめぐって」\n   はじめに―問題の所在―/1 「場所」の概要/2 異文化を組み込んだ社会としての「場所」の実際/おわりに―近代における変容―\n  第7章「アイヌの「自分稼」」\n   はじめに―「自分稼」と収奪―/1 場所請負制度と近世蝦夷地在地社会/2 「自分稼」の定義とアイヌの「帰俗」・「百姓」化/3 蝦夷地の「自分稼」と「自分取出稼」/4 「自分稼」とアイヌ文化―むすびにかえて―\n第8章「近世アイヌの出稼サイクルとその成立過程―西蝦夷地「北海岸」地域を事例として―」\n   はじめに/1 モンベツ領の漁場とその規模/2 モンベツ領アイヌの出稼サイクル/3 交易から出稼雇へ/おわりに\n  第9章「アイヌの「自分取出稼」―幕末期、西蝦夷地ソウヤ場所モンベツ領の事例―」\n   はじめに/1 「出稼雇」と「自分取出稼」/2 給与からみた「出稼雇」/3 出稼雇の「過上」と「切手」/4 自分取出稼の実態/5 自分取出稼の意義と条件/おわりに\n【第III部 在地社会のなかの宗教と信仰】 \n第10章「宗教からみる近世蝦夷地在地社会」\n   はじめに/1 「場所」の構造と特質/2 和人集団と宗教/3 「場所」独自の宗教儀礼の特質/おわりに\n  第11章「蝦夷三官寺と幕府の宗教政策」\n   はじめに/1 蝦夷三官寺建立以前の「蝦夷地」の仏教/2 蝦夷三官寺の建立/3 蝦夷地第一次幕領期における幕府の宗教政策/4 開拓政策のなかでの蝦夷三官寺の役割/おわりに\n第12章「幕末期、蝦夷地への寺院建立と開拓政策」\n   はじめに/1 近世蝦夷地の寺院の概観とその分類/2 幕末寺院群建立の経緯/3和人地寺院末建立の論理と開拓政策/4 蝦夷三官寺末建立の論理と開拓政策/5幕末寺院群に対する箱館奉行の対応とその変化/6 幕末寺院群の実際の活動/おわりに\n  第13章「幕末期、蝦夷地への寺院建立と在地社会―西蝦夷地フルヒラ禅源寺建立と浜中集団をめぐって―」\n   はじめに/1 建立願書の提出とその審理過程/2 西蝦夷地フルヒラ場所への寺院起立をめぐって/3 越年・永住集団と寺院起立/おわりに\n  第14章「近世の蝦夷地支配と神道系宗教者―“鰊獲りの禰宜さん“考―」\n   はじめに/1 蝦夷地における宗教的環境/2 公認社家の蝦夷地止住の実際/おわりに―近世蝦夷地在地社会の成熟と神職・医師\n【終章 本書の成果と課題】\n  1 第I部の論点をめぐって/2 第II部の論点をめぐって/3 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