WEKO3
アイテム
米国型建築レコード整理法とその日本への応用に関する研究
http://hdl.handle.net/10959/00004996
http://hdl.handle.net/10959/000049966e1de3ea-5286-42e9-894a-94047c0d2272
名前 / ファイル | ライセンス | アクション |
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Item type | 学位論文 / Thesis or Dissertation(1) | |||||
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公開日 | 2021-06-29 | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | 米国型建築レコード整理法とその日本への応用に関する研究 | |||||
言語 | ja | |||||
タイトル | ||||||
タイトル | エイコクガタ ケンコク レコード セイリホウ ト ソノ ニホン ヘノ オウヨウ ニ カンスル ケンキュウ | |||||
言語 | ja-Kana | |||||
言語 | ||||||
言語 | jpn | |||||
資源タイプ | ||||||
資源タイプ識別子 | http://purl.org/coar/resource_type/c_db06 | |||||
資源タイプ | doctoral thesis | |||||
アクセス権 | ||||||
アクセス権 | open access | |||||
アクセス権URI | http://purl.org/coar/access_right/c_abf2 | |||||
著者 |
齋藤, 歩
× 齋藤, 歩 |
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抄録 | ||||||
内容記述タイプ | Abstract | |||||
内容記述 | 日本の建築分野においてアーカイブズへの関心は、文化と実務との両面で醸成されてきた。これに対して学協会や教育機関は、研究資料として建築図面等の記録を保存してきた。設計実務では、建築完成時の適法性の確認に主眼が置かれて建築図面等の保存が法令で定められており、2007年の建築基準法等の改正で保存義務がさらに強化された。一方、現代の建築生産の高度化と専門分化は、その過程で作成される記録の大量化と多様化とをもたらしてきた。近年では既存建築の増改築への新たな注目により、新築を中心とした旧来の設計業務とは記録の用途が変化して、記録を保存することの重要性が高まっている。また、日本に限らず現代の建築に合致した方策が必要とされてきたなかで、2000年代にアーキビストのウェイヴェリー・ロウェルは、建築図面一点別の整理法とは異なる発想で、アーカイブズ学に依拠した整理法の有効性を示すとともに、大量で多様な性質を持つその整理対象を建築レコードと呼んだ。 本論では、こうした展開をふまえて、建築分野の大量性と多様性をともなう記録群の保存を日本で実現させる手立てを探る。本論は、第1章と第2章で、日本における建築分野の記録の保存について、これまでの歩みと現在の状況とを把握し、第3章から第6章で、米国で発展した建築分野の記録の整理のあり方について、各整理技法の役割と特徴を検討し、第7章から第9章で、その整理技法の日本への応用可能性について、自身による実践例を通じて検討する。 第1章「日本の建築史研究における記録への関心──調査と整理の通覧と記録の類型化」では、日本の建築史研究における記録の保存を通時的に概観した。建築分野の研究素材は「建築資料」と呼ばれ、1980年代より建築図面等を対象に組織的な調査や整理が試みられてきた。ここでは、第一に、その試みを通覧し、第二に、建築史研究の研究素材を歴史学や考古学の資料論で示された資料タイプと比較することで、建築資料を類型化し、第三に、その類型と整理法との適合性を考察した。その結果、建築資料として、伝統的な「文献」「遺構」に、「建築図面」が昭和初期までに加わったことを確認した。そのうえで建築資料を、建築と間接的に関連する古文書等の「建築関連資料」、建築物やその部材である「建築(一次)資料」、建築物の姿を写真や図面等へと変換した「建築(二次)資料」、建築生産で作成される建築図面等の記録群の「建築設計資料」に類型化した。とくに、「建築(二次)資料」に含まれる建築史研究者の調査記録と「建築設計資料」に含まれる設計者の設計記録とには、大量で多様な記録を集合として扱うことができるアーカイブズの整理法が適合するとした。 第2章「日本における『近現代建築資料』の所在特性──統計的仮説検定を用いて」では、日本全国の建築資料の所在状況について論じた。ここでは、第一に、文化庁の委託を受けて日本建築学会が2013年度と2014年度とに実施した全国調査の結果を整理して、第二に、資料の「所在先種別」と「公開状況」、同じく「所在先種別」と資料価値の判断要素「クライテリア」の二種類の組み合わせを集計することにより、調査項目の関係を数値化して、第三に、集計した各項目について統計的仮説検定を用いて分析した。その結果、日本の建築資料について、機関タイプの「多様な公開方法」、建築資料の価値に関する「『地域性』と文化施設(博物館・図書館・公文書館)との統計上の連関」、建築の存否が記録の保存に影響を与える「特殊な保存年限」に特徴があることを確認した。とくに第1章で注目した設計者に関する記録の所在傾向として、設計事務所や個人が所有するケース、設計者と関係の深い博物館・図書館・公文書館(MLA)が所有するケースが多いことを明らかにした。 第3章「『米国型』とはなにか──1970年代の米国で起きたアーカイブズ論の変容に注目して」では、本論で用いる「米国型」の特性と背景とについて論じた。ここでは、アーカイブズ学の研究あるいは実務上の対象の変化を、建築分野の記録保存が注目され始めた1970年代の米国を中心に、アーカイブズ学研究者の議論を検討した。その結果、1970年代にアプレイザル(記録の評価)の対象が政府記録から民間記録や個人文書へと拡大して、1980年代にアーカイブズ機関の種類が多様化し、その影響を受けて1990年代に米国の独自性を主張するまでの変化を概観した。フランク・ボールズは、社会全体の多種多様な記録をアーカイブズとして扱うことを米国の独自性とみなし、このような米国における1970年代以降のアーカイブズの転換を「米国型〈包括的〉視点」と表現した。 第4章「アプレイザル判断基準の評価──北米での試みを比較する」では、記録群を評価するための判断基準について論じた。フランク・ボールズは1980年代中頃に、セオドア・シェレンバーグらによって提示されてきた数々のアプレイザルの判断基準について相互関係を整理して、全体を「情報の価値」「保持のコスト」「選択の影響」で構成する判断基準リストにまとめた。ここでは、このリストを指標として、1970年代以降に北米で整備された建築分野の記録に関する六つのアプレイザル・ガイドライン等を比較検討した。その結果、総じて「利用」「保持のコスト」「選択の影響」への考慮が十分ではないことが明らかとなった。これらの三つは将来のアーカイブズのあり方を見据えた規準であり、アーカイブズとして記録群の永久保存を目指すには不可欠な視点である。 第5章「編成モデルの影響と役割──『スタンダード・シリーズ』を対象に」では、記録群の編成について論じた。スタンダード・シリーズは、カリフォルニア大学バークレー校で1997年から実施された記録の整理事業の成果として2000年に考案された、建築レコードを編成するための標準的な八つのシリーズで構成されるモデルである。ここでは、第一に、スタンダード・シリーズを構成する「教員文書」「会社記録」「プロジェクト記録」等の各シリーズの特徴を概観し、第二に、米国内におけるこの考え方の受容の様子を把握し、第三に、主題、機能、活動、記録タイプ等によるアーカイブズ学における分類の考え方を用いて、このモデルの役割について考察した。その結果、スタンダード・シリーズはアーカイブズ学における機能分類の一種であることを明らかにした。すなわち、シリーズの区分に記録の作成者の機能や活動を用いることで、建築レコードの大量性と多様性に応じ、サブシリーズの名称に記録タイプを用いることで、利用者のユーザビリティを高めている。 第6章「記述標準の用法──三種類の標準と検索手段との関係」では、記録群を記述するための標準について論じた。記述の標準は、目録の利便性を高めるために作用して、電子目録が作成されるようになると、その重要さが増すとともに、多様化が進んだ。米国アーキビスト協会が新たな記述標準を整備するために組織したワーキング・グループの活動報告において、1989年にリサ・ウェバーは、「データ構造」「データ内容」「データ値」に関する標準として、記述標準の種類を三つに区分して、過去の標準化の動向を俯瞰する枠組みを形成した。ここでは、第一に、この区分を用いて主要な記述標準の特徴を把握し、第二に、標準が用いられた検索手段を分析し、第三に、同一資料を「データ構造」の異なる標準を用いて二種の検索手段を作成した事例について、その記述項目の違いを検討した。その結果、図書のデータベースでの記述とアーカイブズの検索手段での記述とのために、前者にはMARC(おもに書誌情報記述のための機械可読目録法)、後者にはEAD(アーカイブズ記述のための符号化法)を用いる考え方を示した。これにより、多種の検索システム等に情報を登録可能とし、記録の情報をより多くの利用者に届けることが可能になることを示した。 第7章「米国における技法の応用──カリフォルニア州立工芸大学での実践分析」では、前章までに論じたアプレイザル、編成モデル、記述標準による整理技法について、実務でどう応用しているかを検討した。そのため、第一に、カリフォルニア州立工芸大学における建築レコード整理の事業計画書から整理の方針を把握し、第二に、実際に作成された検索手段を分析することで、各技法を用いた成果を検討し、第三に、整理の方針と整理の成果である検索手段とを対応させて検討することにより、整理事業における技法の役割について考察した。その結果は次のとおりであった。アプレイザルでは、権利を保有しない記録は返却したり手放したりすることで、権利と責任を明確にする。編成では、スタンダード・シリーズにより、記録の作成者の機能や活動をシリーズで再現する。記述では、フォルダ・レベルまでにおける少ない項目で記録群全体を網羅的に再現できる。検索手段では、二つの記述標準で二種の検索手段を作成することで、アクセス促進を図っていた。 第8章「日本における技法の応用──京都大学研究資源アーカイブでの実践」では、米国型の整理技法を応用することを試みた。ここでは、京都大学研究資源アーカイブの事業における、図面約15,000点と写真約7,000点とでおもに構成される「増田友也建築設計関係資料」(以下、増田資料)を対象とした。増田資料は存在が知られながらも、その大量性から目録が作成されることがないまま、利用が困難な状態が続いていた。この問題は、第5章で論じた20世紀末米国の未整理ゆえに記録へのアクセスができないという状況と同様であった。そのため、解決策として、これまで検討してきたアーカイブズ学に基づく整理法を用いた。ここでは、第一に、前章の「整理の方針」を援用して整理案を計画し、第二に、この計画と実際の作業が整合しない部分より、従来の方法の課題を導出し、第三に対応策を検討した。その結果、対応策を八つにまとめた。その主なものは、記録の価値判断に必要な建築の専門家との共同や、契約書や業務リストを残すための記録の作成者への働きかけが必要であるとしたことである。また、アプレイザルで権利の明確化が難しい場合に文化庁の「裁定制度」の利用を検討すること、記述で「デジタルアーカイブ」によるデジタル画像の閲覧が求められる場合にアイテム一点別の記述法を用いることは、日本の特徴的な対応である。もっとも、この対応策には、アーキビスト以外が主体となる内容を多く含む。そのため、アーキビストは、記録の作成者や利用者等の関係者全体に行動指針を示しておくことが必要になることが知られた。 第9章「日本における著作権法の影響──権利制限に着目して」では、整理後の記録の利用を促進するために、著作権法の影響について論じた。日本では、著作権者に対する権利制限により、公文書館や図書館で著作物が利用可能となる。また、建築設計等の業務契約では、業務の円滑化を目的に、受託者(設計者等)の著作権を委託者(建築主)が制限することが多い。例えば、建築図面の譲渡禁止である。米国では、設計者等と建築主との契約が記録の利用を妨げる可能性がすでに認識されており、アーカイブズの実務に際して事前に権利の所在を確認するように注意喚起している。ここでは、第一に、公文書館や図書館における権利制限を定めた著作権法を、公文書管理法が定めるアーカイブズの利用方法と対照して、関係を分析した。その結果、著作権保護期間中でも法令が想定していない意図せぬ利用ができることを示した。第二に、「四会連合協定」が定める建築分野における権利制限を、著作権法と対照した。その結果、建築設計等の契約で交わす「契約約款」のために、公文書管理法が可能とする利用に支障を来したり、アーカイブズ等機関への受入を阻んだりすることを明らかにした。以上より、著作権者に対する権利制限を把握したうえでのアーキビストの実務計画と、設計図書を建築生産以外で利用するために契約の考え方の見直しとが必要であることを明らかにした。 最後に、本論の研究成果を以下の三点にまとめた。第1章と第2章では、アーカイブズ学に依拠した整理法への適合が期待できる記録の類型や所在の特徴として、「研究者」「設計者」が作成した記録、「設計事務所」「個人」「博物館・図書館・文書館」が所有する記録を示した。第3章から第6章では、各整理技法に「利用への配慮」が内在する特徴として、アプレイザルで将来の利用やコスト等が判断基準になること、編成でスタンダード・シリーズにより検索手段のユーザビリティ向上が望めること、記述で図書に用いる技法との併用でアクセス促進を実現できることを示した。第7章から第9章では、記録の作成者と利用者との共同に関して、アーキビストからの整理前後に関する行動指針の提示や、建築図面等の譲渡や第三者による利用についての制限を設けない契約が、整理技法の日本への応用を後押しすることを示した。 建築レコードの整理法は、大量で多様な建築生産の記録群について、全体像を集合的に把握することにより保存に与する。その対象は、日本の建築資料のうち、研究者や設計者が作成した記録、あるいは設計事務所や個人等が所有する記録にあたる。また、整理に用いられる技法は、記録の利用にまで影響を与える特徴を持つ。そのため、技法の応用は、整理に留まらず、記録の利用段階までを含めたアーカイブズとしての長期計画に資する。日本での応用の実現には、アーキビストは各種の整理技法を習得するだけでなく、記録の作成者や利用者等との協力関係の構築が必要であり、関係者との共同に向けた具体的な行動指針を示すことが求められる。 |
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フォーマット | ||||||
内容記述タイプ | Other | |||||
内容記述 | application/pdf | |||||
著者版フラグ | ||||||
出版タイプ | VoR | |||||
出版タイプResource | http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85 | |||||
学位名 | ||||||
言語 | ja | |||||
学位名 | 博士(アーカイブズ学) | |||||
学位名(英) | ||||||
言語 | en | |||||
学位名 | Doctor of Philosophy in Archival Science | |||||
学位授与機関 | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 32606 | |||||
言語 | ja | |||||
学位授与機関名 | 学習院大学 | |||||
学位授与機関(英) | ||||||
学位授与機関識別子Scheme | kakenhi | |||||
学位授与機関識別子 | 32606 | |||||
言語 | en | |||||
学位授与機関名 | Gakushuin University | |||||
学位授与年月日 | ||||||
学位授与年月日 | 2021-03-09 | |||||
学位授与番号 | ||||||
学位授与番号 | 32606甲第298号 |