@article{oai:glim-re.repo.nii.ac.jp:00004808, author = {増田, 有希子 and Masuda, Yukiko}, issue = {27}, journal = {学習院大学人文科学論集, Gakushuin University studies in humanities}, month = {Oct}, note = {application/pdf, 本稿は、E. M. フォースター(1879-1970)の初期短編小説である「天国行きの乗合馬車」(1908)と「統合」(1912)を取り上げ、これらの作品において作家が芸術鑑賞に関する自身の見解を示していること、並びにその芸術観が19世紀のロマン主義的音楽観と密接に関わっていることを明らかにする。 音楽家ベンジャミン・ブリテンが、作家の90歳を祝して出版された論集の中でフォースターを「最も音楽的なイギリス人作家」と評しているように、作家は音楽愛好家であったばかりではなく、芸術論において音楽に言及したり小説の中で音楽を用いたりと、あらゆる面で音楽と深い関わりを持っていた。「天国行きの乗合馬車」、「統合」は、従来は単に作家の言うところの「幻想的小説」(現実世界から切り離された空想の世界、あるいは非日常を組み込んだ日常を描いた小説)と見なされ仔細に論じられることがなかったが、作家はこれらの初期短編小説の中で、ロマン主義的音楽観の影響を色濃く反映した自身の芸術鑑賞論を展開しているのである。 「天国行きの乗合馬車」の中でフォースターは、文学を論理的に分析するボンズ氏のアプローチを非とし、また体系的、知的アプローチに深く関与する文化的権威の存在を浮き彫りにする。一方で作家が重点を置くのは、芸術の神髄に触れることを可能たらしめる、無意識的世界の扉を開き想像力を発揮させるといった主人公「少年」の芸術との関わり方である。「統合」では、登場人物たちの音楽との関わり方の変化が描かれている。それは、文化的権威者が音楽に付与した特定の意味を正しく理解するという鑑賞姿勢から、音楽を自らの中に再現、創造し音楽に様々な意味を持たせるという姿勢、または音楽そのものを聴くことでそこに内在する真の意味に触れるという姿勢への変化であり、作家は変化後に見られる登場人物たちの音楽に対する態度を重視する。 以上のフォースターの芸術鑑賞論には、19世紀に興隆したロマン主義的音楽思想の強い影響が認められる。ロマン派の音楽評論家たちが音楽について提唱したように、作家は、芸術は合理的、論理的思考を超越した豊かな創造的表現力によって人の感情に強く訴えることができると確信していた。また、芸術は社会の既存概念その他何ものにも拘束されず芸術それ自体のために存在し、想像力を通してのみ接近され得る唯一絶対的な真の意味が内在しているとも信じていた。 このように「天国行きの乗合馬車」、「統合」は、フォースターの音楽─伝統的なロマン主義的音楽観─への深い理解を示すものとして、さらには、作家が文学作品の中で音楽を用い音楽的表現や効果を追求し続けたことの理由を示すものとして重要な意義がある作品と位置付けることができるのである。}, pages = {123--153}, title = {Aspects of Music:Aesthetic Perception in E. M. Forster’s “The Celestial Omnibus” and “Co-Ordination”}, year = {2018}, yomi = {マスダ, ユキコ} }