@phdthesis{oai:glim-re.repo.nii.ac.jp:00003825, author = {笹井, 雅夫 and Sasai, Masao}, month = {2013-10-08, 2021-12-09, 2021-12-09}, note = {生体膜は、細胞という生体を構成する最小単位を形成する境界の役割を担っている。また、境界としてのみでなく、シナプス伝達等で観察される受容体による情報の感受や、肝臓細胞におけるグルコースの取込み等で観察される輸送体による選択透過性、能動輸送及び促進拡散や、表面抗原タンパク質による免疫特性の発現等を担うことが明らかとされてきた。 その役割の重要性ゆえ、生体膜の機能解明は精力的に行われ、膜タンパク質を介したシグナル伝達等が生体膜に多くの機能を付すことが明らかにされてきたが、生体膜には、数多くの膜タンパク質が存在することから、膜タンパク質の機能解明においては、系を単純化する目的から人工的な脂質二重膜、又はリポソームと呼ばれる脂質二重膜からなる小胞が用いられてきた。系を単純化する目的で用いられてきたリポソームであるが、実際の細胞内部に見られるような、細胞膜で囲まれた細胞内にさらに膜で囲まれた領域(内膜系)が存在し、その内膜系が機能を持つという例は報告されていない。 機能する内膜系の一例として、エクソサイトーシス(開口放出)が挙げられる。エクソサイトーシスは、細胞内の小胞(内膜系)に蓄積された生理活性物質等を、外部からの刺激により細胞外へ放出する現象であり、シナプスにおける神経伝達物質の細胞外への放出や、アレルギー担当細胞であるマスト細胞が、アレルゲンに感作して活性化された際の、炎症性メディエーターの放出等に観察される現象として知られている。エクソサイトーシスによる細胞内物質の放出には、細胞内の小胞が、細胞膜と膜融合することが必須であり、その膜融合には、生体膜にある数種類の膜タンパク質によって制御されていることが明らかとなっているが、生体膜の重要な構成要素の一つである脂質二重膜の役割に関しては、解明が進んでいない。本論文は、生体膜及び生体膜親和性物質の機能解明を行い、それから医療への応用を展開するものである。 報告番号 学 習 院 大・甲・乙・第 号 第二章では、膜融合の脂質二重膜の役割を解明するため巨大リポソーム(GUV)の内部に微小リポソーム(SUV)を内包させ、それが外界からの刺激に応答するというエクソサイトーシスを引き起こす人工系(人工エクソサイトーシス系)の作製について検討した。 研究方法として、生体膜を構成するリン脂質を数種類用いて、SUVs含有GUVを作製し、当該リポソームを共焦点レーザー顕微鏡下で、カルシウムイオノフォアであるionomycinを用いてGUV内にカルシウムイオンを流入させ、経時的に画像を取得・評価した。 その結果、SUVsの構成脂質である蛍光標識脂質がGUVの輪郭に移行していく経時的な変化を捉えることができた。その現象は、ホスファチジルセリンがGUVの構成脂質に含まれていること及びGUV内外に一定以上のosmorality gapが含まれていることが必要であることを確認できた。 第三章では、生体膜に作用する物質の、細胞が有する機能への影響について検討した。生体膜に作用する物質として、酵母等の菌が生産するバイオサーファクタントに着目した。バイオサーファクタントは、界面活性剤として知られる両親和性(同一分子内に新水性及び疎水性の構造を有する)物質である。当該物質の生体膜への影響、及び生体反応に対する影響を評価した。具体的には、アレルギー担当細胞であるマスト細胞のエクソサイトーシス(脱顆粒)に与える影響の有無を評価した。 研究方法としては、マスト細胞(RBL-2H3細胞)を用いて、バイオサーファクタントであるマンノシルエリスリトール脂質(MEL)を添加した際の細胞内カルシウム濃度への影響、炎症性メディエーター放出への影響をカルシウム指示薬による蛍光変化及びELISA法を用いた-ヘキソサミニダーゼ(炎症性メディエーター放出(TNF-、LTC4等)の際の指標物質として知られている)等の放出量を測定した。 その結果、MELの添加により、細胞内のカルシウム濃度は、非処置の細胞に比べ低くなること並びに-ヘキソサミニダーゼ、TNF-及びLTC4の放出量が減少することを確認できた。 第四章では、後述する医療への応用を視野に生体膜へ特異的に接着する物質、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸をリガンドとするCD44に関して評価した。 研究方法としては、CD44を発現している胸膜中皮腫細胞に着目し、ヒアルロン酸及びヒアルロン酸修飾したリポソームを用いてCD44に接着する蛍光標識したヒアルロン酸の接着阻害率を、評価した。 その結果、ヒアルロン酸濃度依存的に蛍光標識したヒアルロン酸の胸膜中皮腫細胞への接着を阻害すること、つまりヒアルロン酸及びヒアルロン酸修飾リポソームが胸膜中皮腫細胞へ接着することを確認できた。 ヒアルロン酸修飾リポソームが、CD44を発現する細胞を標的として、接着することが明らかとなったことから、ヒアルロン酸修飾リポソームを悪性胸膜中皮腫の治療法へ利用することを検討した。 胸膜中皮腫に対する治療法としては、外科手術、放射線療法及び化学療法が存在しているが、有効な治療法が確立されていないため、有効な治療法の開発が望まれている。そこで、胸膜中 皮腫の新たな治療法の開発を目的として、ヒアルロン酸とCD44との接着を薬剤のデリバリーシステムへ利用することを考えた。送達する薬剤には、脳や皮膚がんに対して開発が行われているホウ素中性子捕捉療法に着目し、ホウ素製剤を使用した。 研究方法として、胸膜中皮腫細胞に、ホウ素製剤(ヒアルロン酸修飾ホウ素ナノデバイス(HA-BND-S)又はボロカプテイト(BSH))を投与し、中性子を照射し、その細胞生存率を評価した(in vitro試験)。また、胸膜中皮腫細胞を胸腔内に接種したマウス(胸膜中皮腫モデルマウス)に対して、HA-BND-Sを局所投与(BSHに関しては腹腔内投与)し、中性子を照射後、生存期間を評価した(in vivo試験)。 その結果、in vitro試験では、ホウ素製剤を投与した細胞に中性子を照射した細胞に関して細胞生存率は減少し、ホウ素が取り込まれた細胞が傷害されていることが確認できた。また、in vivo試験では、HA-BND-Sを投与した群は、観察期間(胸膜中皮腫細胞接種後28日目)を終了した段階で、全例が生存していた(対照群は胸膜中皮細胞接種後約18日前後で死亡)。また、剖検を行ったところ、5例中3例において、腫瘍が認められなかった。 本研究の結論は、以下の3点になる。 1. 生体膜親和性物質の機能解明に使用できる二重の閉鎖空間を有したリポソーム(SUVs含有GUV)を開発した。 2. 生体膜の膜融合には、Ca2+と生体膜を構成するリン脂質であるホスファチジルセリンが反応すること及びosmolarity gapが必要であることが明らかとなった。また、バイオサーファクタント(MEL)によるマスト細胞からの脱顆粒の抑制は、脱顆粒の関連タンパク質のリン酸化及び細胞内カルシウムイオン流入の抑制によることを確認した。 3. ヒアルロン酸修飾リポソーム製剤が胸膜中皮腫細胞に接着することを確認した。また、ヒアルロン酸修飾ホウ素ナノデバイス(HA-BND-S)を用いたBNCTにより胸膜中皮腫細胞に対して細胞傷害活性を有すること、及び胸膜中皮腫モデルマウスに対して生存期間を延長することを確認し、BNCTが胸膜中皮腫の治療に有用となる可能性を示した。, application/pdf}, school = {学習院大学, Gakushuin University}, title = {生体膜親和性物質の機能解明と医療への応用}, year = {}, yomi = {ササイ, マサオ} }