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  1. 学習院大学
  2. 学位論文
  3. 博士(日本語日本文学)
  4. 2024年度

『源氏物語』「宇治十帖」論 : 浮舟物語とは何か

http://hdl.handle.net/10959/0002003259
http://hdl.handle.net/10959/0002003259
1a697fdd-4937-4ae2-b1d4-6d6148dd78cb
名前 / ファイル ライセンス アクション
abstract_K337.pdf abstract_K337.pdf (228.9 KB)
ref_abstract_K337.pdf ref_abstract_K337.pdf (290.3 KB)
Item type 学位論文 / Thesis or Dissertation(1)
公開日 2025-08-29
タイトル
タイトル 『源氏物語』「宇治十帖」論 : 浮舟物語とは何か
言語 ja
タイトル
タイトル ゲンジ モノガタリ ウジ ジュウジョウ ロン ウキフネ モノガタリ トワ ナニカ
言語 ja-Kana
言語
言語 jpn
資源タイプ
資源タイプ識別子 http://purl.org/coar/resource_type/c_db06
資源タイプ doctoral thesis
アクセス権
アクセス権 open access
アクセス権URI http://purl.org/coar/access_right/c_abf2
著者 増田, 高士

× 増田, 高士

ja 増田, 高士

ja-Kana マスダ, タカシ

en Masuda, Takashi

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抄録
内容記述タイプ Abstract
内容記述 序論では、「浮舟物語」の梗概と研究史を整理した上で、研究上の問題点と本論の問題意識を述べる。本論は「浮舟を沈黙させた物語とは何か」という問いにこだわりながら考察していく。以下、全十二章の要旨を順に述べる。
第Ⅰ部 「周縁」から読む浮舟物語
第Ⅰ部は浮舟の周辺人物の動きから浮舟物語を考察する。具体的には薫、宇治山の阿闍梨と横川僧都、明石中宮、そして天候としての雨である。あえて「周縁」という表現で括ることで、浮舟物語の主人公である浮舟にとって「周縁」と見えるものがいかに物語を動かしているのか、浮舟の外部にある他者の言動がどのように浮舟を導いていくのかを探った。
第一章「薫の「建築」論―建てることへの志向とその蹉跌―」では、薫が建物を建てることへ志向について、自身を持続させていくための薫なりの方法であることを論じた。「建築」は薫の欲望構造の問題とも不可分に結びついている。薫は建てることに裏切られ、そこに住まわせられる予定の女君は薫の建物におさまることがなく逃れていくが、それは物語を前進させる方法であるとともに、女君の問題ともかかわる。浮舟は大君のかわりとなる「人形」として登場したが、それは「建築」同様、薫を挫折させる。薫の欲望の射程内におさまるようでおさまらない浮舟であるが、それゆえに薫は浮舟をひたすら追い続けることにもなる。
第二章「宇治の阿闍梨と横川僧都―僧の媒介機能による「内部と外部」の生成力学―」は宇治の阿闍梨と横川僧都の媒介性を論じた。阿闍梨は薫を宇治へと導き、八の宮と姉妹との隔てのきっかけともなるが、それは恋愛の仲介という皮肉な媒介機能といえる。僧都は浮舟を宇治から小野へと横断させ、さらには中宮に浮舟の情報を漏らすことで、最終的には薫も浮舟の生存を知ることになるり、結果的に薫を浮舟に近づけることになる。浮舟の生存を薫に知らせることで、浮舟が自ら逃れてきた世界にふたたび浮舟を案内するという皮肉な媒介機能を果たしているのであり、浮舟本人が希求するあり方とは逆の方向へ浮舟を導いてしまうのである。
第三章「語りの場としての明石中宮―「蜻蛉」巻・「手習」巻を中心に―」は明石中宮を論じた。中宮は「蜻蛉」巻以降では話の「聞き手」の役割が大きくなる。大納言の君から浮舟の正確な情報を聞き、「手習」巻では横川僧都の体験談を聞く。「蜻蛉」巻の世界は浮舟を大きな情報網の中で語ろうとするが、その情報網の中心にいるのが中宮である。また、小野では浮舟は浮舟であると判明せず、中宮のもとでのみ浮舟は浮舟である判明する。噛み合わない情報が接続され、「浮舟物語」として統合されていくのは中宮という「語りの場」である。のみならず、小宰相に命じて浮舟の生存を薫に知らせることで、匂宮、薫、浮舟の動向を左右してもいる。中宮によって「浮舟物語」が動かされていくことで、浮舟が「浮舟物語」から逃れられないという結末が導かれていく。
第四章「浮舟物語の「雨」―隠すこと・顕すこと―」は「浮舟物語」に用例の多い「雨」の機能を論じる。正篇世界における雨の中でも、とくに「物語」とのかかわりに目を向け、雨が「物語」の現場を形成する機能があることを確認した。「浮舟物語」の雨は浮舟を世間から隠すことに加担する。その一方で、正篇の方法である「物語」の現場を形成する機能を利用しながら、今度は中宮という「語りの場」を作り出し、浮舟を話題にさせることで浮舟の存在を顕していく雨として機能する。「浮舟物語」の雨は浮舟を決して隠し通すことはない装置としてある。
補論「『うつほ物語』「国譲」巻における立坊争いと夫婦関係―忠雅夫妻の挿話における二層構造の「語り」―」は『源氏物語』に先行する物語である『うつほ物語』について扱う。忠雅夫妻の挿話が国譲りという国の大事を動かす力学を考察した。『うつほ物語』においても周縁的人物たちが戦略的に用いられて物語の動力とされていることを明らかにした。
第Ⅱ部 「手習」「手紙」から読む浮舟物語
第Ⅱ部が第Ⅰ部と異なるのは、とくに「手習」が内部から分泌した外部であるという点に目を向けたことである。浮舟でありつつ浮舟の思いどおりにならない外部としての「手習」、それとのかかわる「夢浮橋」巻の「手紙」を扱った。
第一章「浮舟の手習―贈答としての手習―」は浮舟の贈答に注目した手習の発生論である。従来、自閉的な営為と位置付けられてきた浮舟の手習がが贈答と深くかかわる形で行われるようになる点に目を向けた。「浮舟」巻では、贈歌を受けつつも一般的な男女の贈答からは外れて自身の身の上を詠んだ歌になってしまうが、それは浮舟の苦悩を抱え込んでいくあり方と対応するものである。一方で「手習」巻では、散文の記述をふまえると、より積極的に他者を意識するような性質が見受けられる。浮舟の手習は孤独の中で行われているようにみえる場合でも、自閉的なものとはいえないことを確認した。
第二章「浮舟の手習―外在化された内部としての機能―」は第一章で扱った浮舟の手習の発生論を受けたものでもある。まず、手習が「手習する主体」と「手習にあらわされた主体」という二重性をもつことに着目した。手習は外在化された内部として、もう一人の自己とも呼べる主体という性質を色濃くして生成され、機能する。一方、それは書かれたことばであるため、自分でありつつ、自分ではないという矛盾を抱え込んでいる。手習が他者あるいは手習した本人の目にふれた時、どのように他者あるいは本人に作用するのかは予測不能であり、自分の管理下に置けない自分という性質をふまえて「管理不能性」を手習の特徴と捉える。それを前提として、「浮舟」巻と「手習」巻の手習を考察した。「浮舟」巻では匂宮に「中空」の手習を咎められた場面にはじまり、浮舟は手習を人に見せず、悩みを深めて入水を決意することと並行して、手習類を処分し、自らも入水を試みる。しかし、処分した手習は残存し、浮舟もそれと対応するように生き残る。「手習」巻では手習が浮舟の唯一の自己表現手段であるとされつつ、手習を他者との窓口として頼ろうとする時、管理不能の手習が思いも寄らない形で浮舟を追い詰めるはたらきをしてしまう。手習は浮舟の頼みの綱であるはずが、浮舟を身動きがとれない状況に追い込むはたらきをしてしまう。
第三章「「夢浮橋」巻の手紙と物語の終わり―横川僧都と薫の手紙―」は「夢浮橋」巻における横川僧都の手紙と薫の手紙を考察した。僧都の書いた二通は順番が前後して小野に届き、宛先に混乱をもたらす。薫の手紙が届いた場面には柏木の手紙の問題を彷彿とさせる「つぶつぶ」という記述があり、柏木のような女君への執着を暗示させる。そして「夢浮橋」巻の手紙は正篇の終わりに描かれた手紙とは異なり、処分されることなく、内容の解釈も宙吊りのままである。「夢浮橋」巻では他者の書いたことばである手紙までもが押し寄せて、浮舟はそれに包囲されるように物語は終わる。
補論「「すさび」「すさぶ」考―「手習」とのかかわりから―」は第Ⅱ部で中心的に論じてきた「手習」とのかかわりに注目し、書くことの「すさび」「すさぶ」という表現を考察した。「手習」を「書きすさび」としたのは『源氏物語』からである。「手習」に「心のおもむくままに書く」という定義がなさていくことに加えて、夫婦関係に限らない人物間のコミュニケーションにおいて、意外性のある贈答から交流を切りひらく工夫がみられる。
ここで第一章から第三章までの議論の関連についてまとめると、第一章は手習の発生論、第二章は手習が外在化された時の機能を論じた。浮舟の手習は他者とのかかわりの中から生じるが、あくまで贈答ではなく手習であり、それは書かれた自己であるからこそ内部の外部として浮舟を追い詰めるようにも機能する。浮舟の手習を自閉的なものと捉えるだけでは「浮舟物語」の手習を捉えることはできず、他者、外部という観点から考察する必要性についても明らかにした。第三章で扱った手紙も浮舟を追い詰める外部という点でかかわりをもつと考えられる。手習とのかかわりについての詳しい考察は今後の課題だが、正篇世界の終わりとは徹底して異なる終わり方を打ち出していることはたしかである。
第Ⅲ部 「引用」から読む浮舟物語
第Ⅲ部は「引用」の観点から浮舟物語を考察した。その意図は「手習」や「手紙」のように作中人物の書いたことばとあえて区別し、人物の内面、心情、意図とは別の次元で「浮舟物語」のことばの問題を考えるためである。
第一章「浮舟と匂宮の「中空」―『伊勢物語』二十一段と「若菜上」巻の紫の上を手がかりにして―」は、「浮舟」巻で浮舟と匂宮が手習する際に、浮舟が和歌中に詠んだ「中空」という語に注目し、匂宮がこの「中空」を咎め、浮舟が紙を引き破るという展開に発展することの意味について考察した。「中空」は『伊勢物語』以降、男女の別れという文脈で使用される語であり、浮舟の手習歌の「中空」が思わず呼び込んでしまったその意味が匂宮の咎めを導いたと考えられる。浮舟の「中空」は他の用例と異なり、女君の側に責任を負わせる形で用いられる。このような引用は浮舟にことばの責任を負わせるはたらきをしているのである。
第二章「「手習」巻の「夕霧」巻引用―〈記憶=テクスト〉としての夕霧物語―」は「手習」巻において、「夕霧」巻の引用の機能を考察した。「手習」巻では浮舟の過去の記憶がフラッシュバックするようにくり返し問題となるが、夕霧物語も物語にとっての記憶であり、くり返される引用の記述とその機能を〈記憶=テクスト〉と称した。妹尼、浮舟、中将という関係は「夕霧」巻の御息所、落葉の宮、夕霧という関係をふまえたものと考えられるが、とりわけ中将と妹尼のやり取りは夕霧と御息所のそれと重ねられながらも、自身の願望や欲望を全面に押し出したものとなっている。そのため、落葉の宮にくらべて浮舟の特異性が際立つような引用ともなっている。出家を果たせなかった落葉の宮をふまえることで、逆に出家を果たしたことの意味を問われ、逃げ道のない方向に導かれていく浮舟が鮮明に描き出されている。
第三章「浮舟の最終詠「あまごろも」歌と手習―『竹取物語』引用と歌を「書くこと」―」は、第Ⅱ部第二章で扱った浮舟の最後の手習であるあま衣歌について、『竹取』引用という観点から考察した。本章は一首内における「や…む」という語の呼応関係を重視して、先学の指摘による「不望予想」の用法と考えた上で、物語内の和歌中における同様の用法を検討した。『源氏物語』内にも「不望予想」の用法が使用された和歌は十首余り確認することができた。その上で、浮舟があま衣歌を「書く」ことの意味を考察した。かぐや姫は昇天する際に手紙を書き残すが、その本文には「書く」という語が幾度も使用されている。そして、かぐや姫の昇天と手紙を書き残す行為は表裏一体の論理である。浮舟のあま衣歌は「手習」という語がなく、「と書きて」とあることから、この箇所も『竹取』引用として重視すべきだと考える。書くことで昇天を決定付けていくかぐや姫とは異なり、浮舟はその落差を示される。そのような引用の方法であり、なおかつ、浮舟に手習をやめさせる一因としての引用でもある。
本論の結論では、以上の内容に示したような各章の内容を整理した上で、今後の課題を述べた。
フォーマット
内容記述タイプ Other
内容記述 application/pdf
出版タイプ
出版タイプ VoR
出版タイプResource http://purl.org/coar/version/c_970fb48d4fbd8a85
学位名
言語 ja
学位名 博士(日本語日本文学)
学位名
言語 en
学位名 Doctor of Philosophy in Japanese Language and Literature
item_10006_degree_grantor_42
学位授与機関識別子Scheme kakenhi
学位授与機関識別子 32606
言語 ja
学位授与機関名 学習院大学
item_10006_degree_grantor_49
学位授与機関識別子Scheme kakenhi
学位授与機関識別子 32606
言語 en
学位授与機関名 Gakushuin University
学位授与年月日
学位授与年月日 2025-03-31
dissertation_number
学位授与番号 32606甲第337号
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Ver.1 2025-08-29 09:40:56.585930
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